2010年6月 JBSA東京 「あほうどり」回航レポート
「あほうどり」横浜回航の報告を申し上げます。
回航実施日 :2010年6月20日
参加者<敬称略) サイテド :橋本、児玉、小柴、谷下田 ブラインド:菊池、湯川 回航区間 :東京夢の島マリーナ~横浜ベイサイド・マリーナ幸浦地区 年次定例点検・修理のための横浜回航。 定期練習の集合時刻より一時間早い8時30分の更に10分も前に新木場駅に全員気合を込めて集合。 マリーナに到着後、早々に乗艇手続きや着替えを終え9時7分に早くも出航。 夢の島公園熱帯植物園のスポット・ウエザー・ニュースは、午前九時まで雨、正午以降は曇りで南東の風3~5メートル、千葉県保田港では、これより早く雨があがるとあったが、蒸し暑いが雨は降らず、これなら或いは保田に寄港して鯵フライの昼食をエンジョイできるかと期待に心はずむ。 9時25分メインセイル、次いでジブセイルをアップ。南東の風、5~6メートル程度の風であろうか、クローズで心地よいセイリング! 振り向けば背伸びを続けているスカイ・ツリーが靄の中。 昨年の保田レース以来の谷下田さんは、その後、舌鋒愈々鋭くなり、ジョージ・クルーニー主演のパーフェクト・ストームの話から港町を含めた数々の海の体験をご披露になる。 ヨット経験は児玉さんよりはやや短いけれど、海の経験はずっと長いと言われ、‘極限を経験したい’と言われるだけあって、私の苦手とするバウ・ワークの身軽さは、まさに義経の八艘跳びの感あり、お見事! 今日は練習日ではないが、湯川、菊池さんの順でヘルムズに当たらして頂く。 風は弱いのに意外にもウエザー・ヘルムを強く感ずる。ティラーを引くのに腕力に頼ってしまい、「こらっ!肩に力が入っているぞ!」とかって先生に怒鳴られた経験を思い出した。 一時間弱で橋本さんにヘルムズお願いして拝見すると、やはり肩にも腕にも全く力が見られず、身体全体でのティラー捌き。 やはり横綱と新弟子の格の違いを見せられる想い。 入会後二度目の乗艇の菊池さんがティラーを握る。大島等へのセイリング経験もある海の乙女とあって、悠然たるヘルムズぶり。「ウエザー・ヘルム、結構きついでしょ?」 と声をかけたところ、かのエリカ女史の有名発言と同様、「別に」と言われてしまった。 ウーム、ショック! 11時頃から風が西にふれ始め、風速も7~8米に上がった感じ。11時15分、14時方向に海ホタルを見る地点の赤白のセンター・マーカー近くでタッキングし、昼食をとる。 12時15分、風の塔に接近し再びタッキング。 風は更に西寄りに振れながらあがり、うねりも大きくなり兎が跳び始めた。 川崎沖には常に三角波のような嫌味な波があると児玉さんから説明があったが、今日は加えて強い潮の流れも加わっているとのこと。(この日の1回目の満潮は11時32分) 残念ながら、時間的な制約から、鯵フライを断念してジブを下ろし、機帆走で横浜に直行することになった。 丁度一ヶ月以前、他の船で保田に停泊した際は、頼みのばんやが定休日で、仕方なく、おどやのスーパーで魚を求めポンツーンで捌いて食べたのだが、あまりおいしいとは感じなかったので、今回は大いに期待していたのに残念無念。 川崎沖を通過しても横波は収まらず、機帆走のせいか、タッキングのたびにデッキを波が洗うようなヒール。バランスの悪い私が、タックの際、下側のジブ・シートを引いてもバランスを崩して引ききれなかったり、姿勢が低くなってライディング・ターンを起し、あわててシートを緩めなおして外したり、醜態連続でご迷惑をかけてしまった。 スプラッシュの連続でコックピットの全員びしょ濡れとなり、少し着込む。 暫くバースで座らせてもらうとパンチングの音も激しい。熟睡していた谷下田さんの身体が前後に滑っていたが、遂にはバースから大音響と共に転げ落ちた。 かって関西マリーナからの「あほうどり」回航で、ランニングで艇体全体が完全離水のサーフィンを繰返した空恐ろしい、ではない海恐ろしい経験者の児玉さんは涼しい顔で舵を握り続ける。顔には「東京湾だろ、しれてるよ」とある。リーフもしてはいないし、そうなのかな。 サイテド全員が涼しい顔をし、菊池さんも大きなヒール・アンヒールの繰返しのなかで、頭からスプラッシュを浴びながら平然としている。私も生きているうちに、皆さんのように成りいものだ。 14時50分、ベイサイド・マリーナ幸浦地区に入り、テンダーに乗った有限会社エス・ビー・エフの貝道社長の出迎えを受け着艇。そのまま即時スムーズに上架された。 上架された「あほうどり」には、意外なほどフジツボ類の付着は少なく、塗装も痛んでいなかったが、ラダーにやや弛みを生じているとのこと。 小柴さんによると横浜市民ヨット・ハーバーであれば、一年間に驚くほどフジツボ類がつくとのこと。悦ぶべきか悲しむべきか。 一同、シャワーを浴びたり、ビールで乾杯したり。それにしても、私以外は皆、どうしてこうも悠然としているのだろうか? もっとも、橋本さんから「YBMには出航禁止の赤旗が揚がっていたし、上架のため出迎えて下さった係りの人から『この風ん中、来たんですか?』と訊ねられた」と聞いて、私も満更でもない気持ちになれた次第。 因みに、帰宅後、ディンギーのゲレンデ湘南港の風速を調べたら、午後2時に最高18.5米となっていた。 いかな東京湾とは申せ、多少は風があったのではありますまいか。 「あほうどり」に別れを告げ、全員、満ち足りた気持ちで鳥浜からシーサイド・ライン経由で帰路についた。 「あほうどり」よ、名医の診断と治療を受けて一週間後に元気でまた会おう。 ゆっくりお休みなさい。