2002年11月17日

初めてのスピンランと南西沖ブイ

文 新米サイテッド扇谷

2002年11月17日(日曜日)に行なわれた、シーボニアヨットクラブ主催の「のんびりレース」に、ルミナス(J24)で参加しました。

「12月中旬並の冷え込み」と天気予報が告げる朝、7時半の三崎口に集まったメンバーは、橋本、石田、福島、村上、ラルフさんのベテラン諸氏に、ブラインドの新井さんと小生を加えた7人。

風は北東の寒風が8メートルほどと強めでしたが、これだけ人数がいれば、どんなヒールでも起こせそうです。

今日のレースは、油壷沖の赤白ブイ近くに設けられたラインからスタートして、南西約5マイルにあるブイ(通称「南西沖ブイ」)を回って戻るというコースです。行きは真後ろからの追い風、帰りはタックの連続でしょう。
マリーナに移動してルミナスのセットアップをしていたところ、嬉しい差入れ?がありました。
ワッツの戸叶さんが、新しいセール(メイン、ジブとスピン2枚)を届けてくれたのです。

シャキシャキのメインとジブに着替えたルミナスに7人で乗り込み、体重の合計に自信漫々(ひょっとしたら上位入賞?)でマリーナを出航しました。
「のんびり」とはいっても、そこはレースのこと、沖に出るなり「新しいスピンを試そう」ということになりました。小生、ルミナスのスピンランは初体験。クルージングでは、大事をとってジブを下ろして整理してからスピンを上げることもありますが、レースのときは、スピンとジブの両方を上げておいて一方を下ろすという段取りになります。

これまで、ジブシートが2本出ているだけだった前デッキは、石田さんとラルフさんがてきぱきと動き、スピンポールとスピン関係のシートが取り回されて準備完了。が、小生の目には「あやとり」のパズル状態で、シートの色分けを目で追うものの、何がどこから入ってどこに出ているのか???しかも、以前乗っていた30フィート艇ではスピンの入ったバッグをバウに運んで展開していたのですが、どこにもバッグがないと思ったら、J24ではキャビン入口に四角いスピンバッグを取り付けるんですね。いやはや、艇によって、こうまで違うとは思いませんでした。経験不足を思いっきり自覚させられました。

「よーし、上げよう」の声で、何をすればよいのか解らないうちに、スルスル・ポンとカラフルなスピンが開きました。途端に素晴らしい加速でスピードが上がり、艇の上では風を感じなくなって快適な風下航の始まり。暑い時期の風下航のデッキは照り焼きになって辛いのですが、寒い日には救われます。

強い北風の中でスピンランの試運転も済み、風上へ戻るために「ジブ上げて、スピン下げて」作業の時が来ました。諸兄姉ご賢察のとおり、「△△△出して!***引いて!」と指示されて、ハテどれだっけ・・・。狭いデッキの上は、さまざまなシートがたるんでたり、キンと張ってたり、転がってたり。スピンハリは緑色?フォアガイってどこよ?あああ・・・(放心)。こりゃ、不慣れな作業で邪魔するより、バラストに徹したほうが艇のためだナ。

スピンランで快調に風下へ飛ばしたせいか、スタートラインに戻る風上航は予想外に時間がかかり、本部船が見えるところまで戻ったらスタート時刻。しかし、本部船にはAP旗が・・・幸運にも、スタートは延期されていました。
本部船を回り込むところで、ちょうどスタート5分前になり、絶好のタイミングになりました。

たくさんの参加艇で混み合う中をすり抜けながらカウントダウンが進められ、アウターマークの手前から、10時5分の信号でジャストスタート。周りの各艇も一斉にスピンを膨らませて南下を始ます。スピンのコントロールはラルフさんと石田さんが担当、ルミナスは大型艇に混じって先頭集団に入っています。

城ヶ島を過ぎたあたりから風と波が強まり、追い波でサーフィンが始まりました。水中でフィンキールがブブブ・・・と唸り、すごいスピードです。バウが波に潜りそうになるので、マスト脇でスピンシートを操るラルフさん以外は、みんな後方に集まってバランスをとりました。まわりにいる参加艇にもトラブルが出てきました。ヘッドステイにスピンが絡まった艇や、吹流しのようにマストトップからスピンをなびかせている艇も見えます。波に押されて横倒しになりかかったのも見えます。ルミナスも一度だけブローチングしかけました。

城ヶ島が後方に小さくなる頃、行く手に南西沖ブイが見えてきました。海図の上では知っていましたが、実物を近くで見るのは初めてです。全体が黄色に塗られた、直径10メートルほどの円盤(浮き台)に高さ8メートルほどの細い灯台が立っている。遠目には、そんな感じのブイでした。水深は600メートル以上あるのに、流れもせず、よく止まっていられるものです。近づくころには、マーク回航の準備で、ブイを眺めている余裕はなくなりました。

大型艇は既にブイを回ってスピンを降ろし、クローズで上ってきます。中・小型艇も次々に集まり、ルミナスが回る頃には3艇が重なり、「水下さい!」「ROOメートル!」と大声が飛び交います。1挺身の水あきでブイを回り込み、ドタバタとスピンをしまい込んで風上航が始まりました。
風下航はスピンの猛スピードで40分ほどでブイまで来ましたが、今度はクローズホールドでドブン・ザブンと飛沫をかぶりながらの波越えです。濡れた指先や顎が北風に吹きさらされて、痛く痺れてきます。ときおり交差して行く他の艇のクルーも、冷たい風と潮に、小さく固まっているようです。

みんな大きくヒールして帆走している時に、リーフ(縮帆)して平然と滑らかに帆走してくる艇がありました。石田さんから「無理してフルセールで走るより、リーフしたほうが速いときがある。ヒールが小さいから横流れしにくく、安定しているのでトラブルも起きにくい。」との説明を聞いているうちに、その艇は風上へ走り去っていきました。なるほど、納得!しかし「ルミナス」(J24)には最初からリーフの儀装はありません。みんなの人力(体重)を合わせて、ヒール起こし!

何度かタックを返して北上し、城ヶ島を過ぎたあたりで波が静まってきました。フィニッシュ目前で中型艇「ヴァルキリ」と並び、きわどいデッドヒートになりました。12時17分ごろ、2艇並んでほぼ同時にフィニッシュ。ブイを回ってからの風上航が、1時間半も続いたことになります。

帰り着いたマリーナでは、熱いトン汁(サケも入っていたから石狩鍋?)と焼き芋が振舞われ、身体の内側から温まりました。
「ルミナス」をマリーナに上げて水洗いし、石田ハウスで休憩してからクラブハウスでの成績発表・表彰式に出ました。
大会委員長から「このぐらいの風のほうが、技術の差がハッキリ出るので面白い」との講評があり、城ヶ島沖での各艇のトラブルを見てきたあとだけに、説得力がありました。

レース結果は、仙台から参加した1艇を含めて37艇が参加。そのうち1艇はOCS(フライング)、3艇がリタイヤで、有効にフィニッシュしたのは33艇。「ルミナス」は20位でした。
フィニッシュ前で競ったヴァルキリは28フィート艇でしたが、レーティングがルミナスより小さく、18位になりました。4フィートも大きいのにレーティングが小さいなんて!?

初めてのレース参加でしたが、経験不足から結局「お客様」になってしまいました。スピンネーカーは上げ下ろしや取り回しが面倒そうで敬遠していましたが、今後は「逃げずに」スピンワークの練習に励もうと思います。