津軽海峡横断ヨットレース2003

文 扇谷(おうぎや)光伸

7月19日(土曜日)?7月20日(日曜日)

このレースは青函連絡船が廃止されたころ、青森市と函館市が一丸となって開催した「青函博覧会」がきっかけで始まり、毎年、海の記念日に開催されて今回で16回目。近年ロシアに販路拡張著しい地元の銀行が冠スポンサーになっており、今回はロシアから7艇(女子チームも1艇!)が参加して、新旧大小とりまぜて合計27艇の壮観なスタートになりました。小生の乗艇はヤマハ30フィート「ポーラスター(北極星)」、乗員は4名。

スタートは青森港を19日(土曜日)朝9時、曇りで気温18度。この地方特有のヤマセ(霧まじりの冷たい東風)の中、一斉に陸奥湾をアビームで北上。目指すは真北60マイル先の函館港。
東風のときは、陸奥湾の中央部に強風の通り道ができ、各艇30度ほどのヒールに耐えながら平舘海峡(下北半島と津軽半島の間の水道)に進む。しぶきに濡れた体はヤマセに吹かれ、カッパを着ても寒い。
例年は微風レースで平舘海峡で夕凪になり、一晩中漂泊する目にあうが、今回は強風下のアビーム1本で11時には水道に入れた。2時間で15マイルという記録的なスピードだが、津軽半島先端(竜飛岬)を左正横にクリアした昼頃、下北半島のブランケットに入って一時微風。海峡本流では大荒れとの予報もあり、ここで昼食。ゆでたてのスパゲッティで腹を暖めた。微風域は30分ほどで過ぎて海峡本流にさしかかった。

東流する海峡本流に東からの強風がぶつかるので、その後は目を開けられないような強風と大波。津軽海峡本流部分では大型外航船と何度か交差したが、荒天帆走中の当方は文字通り「運転不自由船」で、圧倒的な航路優先権を誇り?外航船が避けてくれる。小型の貨物船は大きくピッチングしながら、船首に大輪の波の華を咲かせている。当方も、艇首で青波をすくったり、艇首で砕けたしぶきが頭上を通り越して後ろに飛んでいったりと、なんとも印象深い(あとで夜中にうなされそうな)帆走を続ける。風は15メートル近く、4人の目方ではヒールは戻らないが、艇速はGPSで8ノット以上をキープしており、3時ごろには霧のカーテン越しに函館山が見えてきた。夕方5時過ぎに函館港でフィニッシュ。青函フェリーで4時間のルートを、8時間で来てしまった。

津軽海峡を横断して日没前にフィニッシュできたのは初めてだったが、反面、妙に時間が余った。
函館温泉でのんびり過ごし、夕食は函館のうまい魚を食べ、艇内で酒盛り。20日午後の表彰式は、50人近いロシア参加者(来賓にはプリンセス・ナターリャも)のためにロシア語通訳付き。小生のポーラスターは、艇の小ささ(レーティング)が幸いして6位に入賞できた。
夜の函館港花火大会は断念して夕方の特急に飛び乗り、新幹線に乗り継いで、23時過ぎに東京へ帰着。
8時間の帆走中、綱引き(メインシート)と重量挙げ(ティラー保持)を続けたせいで、上腕と背筋に筋肉痛が残ったが、とても気持ちよい。
こんなシンドイ思いをしに、来年も多分参加するんだろうなあ。

潮抜きしてベランダに干し並べた、衣類・装具を眺めつつ、まずは御報告まで。